2019/06/12 19:43

皆さま初めまして。

当店ではありがたくも「商品がキレイ!」といつもお客様にお褒めのお言葉を頂いています。このブログではお売りいただいた楽器が商品化されるまでの様子を一部ご紹介していこうと思っています。また、楽器や音楽といったテーマで色んな「持論」を展開していきたい。とも、思っています。もしよろしければ、お付き合いください。


《買取報告》

今回の物はYAMAHA GDP-1 です。1996年ごろ製造の電子ピアノですが、ハンマーアクションがグランドピアノっぽい、という類のピアノでございます。当時は「グランタッチ」と呼んでいたそうです。





買取当初の情報では「完動品」と聞いていましたが、2カ所鍵盤が戻りません。配送中のショックですかね。すでに、嫌な予感満載ですが、開けてみますか・・・





難儀する事10分。ようやく、バラシの為のビスを発見してオープン。結構なアコースティック感がありますね。懸案の戻らないハンマーの原因はすぐにわかりました。↓





グレーの重りみたいなやつがどこかへ飛んでいってます。なるほど、それを探してくっつけてあげればいいんだな~。よし、探そう。





まず、1個は難なく発見。しかし、もう一個がなかなか見つかりません。





隙間にカメラを入れて、探してみますが見当たりません。参ったな~、これは全部バラす流れですかね・・・・と途方にくれながら何となく探していたら発見しました!↓





こんなところに隠れていたんですね。そーっと、救出します。と、ここである物を見つけて(?)見てしまいました。↓





今、まさに外れようとしているハンマー発見。あぁ、なるほど。って事で、ほかの鍵盤もチェック(フォルテッシモぐらいの強さで)鍵盤を弾いてみると・・・↓





やはり。20年以上前の物になりますので接着剤が完全に劣化して、もろくなっていました。という事は、今はOKでも販売した後、お客様宅で弾いているうちに、この「おもりが外れてどこかへ飛んでいく」現象が起こりうる可能性大です。すなわち、「全数チェック」です。





鍵盤を弾いただけでも約7割がアウト。残りの3割はハンマーを外して手で触り確認した時点で「ポロッ」となり、88鍵中、87鍵がアウトでした。なぜか、1つだけ強固に接着されていて外れませんでしたが、いつこの現象が起きるか分からないのでそれも一旦外して、接着のやり直しをすることにします。





作業をすすめるにあたり、バラし開始です。ハーネス関係、スピーカーボックス、数十個のビスを外していきます。





ラチェットドライバー最高ですね。ちなみに、この作業、店舗に入ってすぐのちょっとしたスペースでやっておりますので、多くのお客様が足を止めて様子をご覧になって行かれます。なかなか、電子ピアノの中身を見る機会は無いですからね。お客様:「すごーい、こんな事までやるんですね」・・・私:「ええ、やるつもりはありませんでしたけどね・・・やれないかも知れません・・・」そんな、やり取りをしつつマグロ・・失礼、ピアノの解体ショーは続いていきます。





スピーカーなどのパーツを外したところで作業開始です。





このハンマーに残っている古い接着剤を取り除いて、新たに接着していきます。





このおもりですが良く見ると数字が書いてあり、しかも、鍵盤によって数字が違います。全部で8通りぐらいあったような(気がします)・・・。単純に「ド」は1で、「レ」が2で、とかでは無く、全くバラバラでしたので何か意味がある可能性がありますので、ハンマーとおもりがそれぞれついていた場所にきちんと戻るように表示テープを貼りながら進めていきます。





おもりの接着剤を除去します。





ハンマーの支柱もボンドを除去して、ペーパーで整えます。





おもりにボンドを流し込み、支柱をセットしてずれないように輪ゴムで固定。そして、表示テープする。





かけるの「88個」やっていきます。ちなみに、「C3」とは3番目のドって事です。





88個完了。現在、乾燥中。





乾燥後、接着具合を確認してハンマーを元に戻していきます。不安でしたが、どうやらしっかりと接着されていました。実はこの機種、この手の「故障」というか「おもり外れ」の事案はよくある話らしく、以前はヤマハの技術者が訪問してきて修理対応をしてくれていたようです。(現在、やっているかは不明)1個だけ強固に接着されたハンマーがありましたが、もしかしたらそのハンマーだけ何かの拍子で外れて「修理済み」の物だったのかも知れません。





元に戻していきます。ハーネス関連、スピーカー関連の固定が終わった時点で動作チェックします。残念ながら、1個だけ音の出ない鍵盤がありました。運よく、というか一番左の「ラ」です。↓





鍵盤センサーの光ファイバーケーブルが断線しています。トホホ・・・。切れたところに光が当たって、切り口で反射するのか分かりませんが、断線部分が赤く光っています。って、感心している場合ではありませんね。これは、私には「修理不可」ですので、この部分の修理は断念します。





ひとまず、完成です。「一番左のラが音出ません」の一言を添えます。今回、修理しながら感じた疑問が「光ファイバーってどういう仕組み?」と「なぜ、鍵盤はラで始まるのか?」「なぜ、88鍵?」です。特に、「ラ」については昔から疑問に思ってました・・・・音楽の授業では音階のスタートは「ド」即ち「C」。基準音は「ラ」すなわち「A」。ドが「A」だったら何となく覚えやすいんですけどね。所説ありますが、基準音のラは例えば「地球の自転の音はラである。」「電話のツーっていう音はラである。」「赤ちゃんの泣き声はラの音。」など、本当かどうかは知りませんが、興味深い内容です。だとしたら・・・・・・・・おっと、最後に脱線してしました。続きは、またの機会にします。最後まで、お付き合いいただきありがとうございました。